ごきげんよう
もぅ何年も前の話しです
家族全員で自宅近くの広場へ行って花火を楽しみました
沖に小さく観える烏賊釣り船の漁火を背景に朱や黄、桃や緑の色が乱舞する光景に心が騒ぎます
小さな光の塊は次から次に生まれては消え、消えては生まれる
その光の流れが心に焼き付けられます
焼き付けられた其の光彩は決して消えることはなく
むしろ時が経つほどに鮮明で、益々鮮やかにして放ち続けるものかもしれません
その証拠に、早々にあの世に旅立った妹が手にしていた線香花火はもっとチリチリと音をたてて、飛び散る雪の結晶のような火花はもっと大きく長持ちしたはずなんだがなぁなどと考えてしまいました
目の前で繰り広げられている光景は
今であって今ではないのかもしれません
この世であって、この世でないのかもしれません
花火を囲んで暗闇にいる周りの人達も過去に出会った人達や亡くなった人と入れ替わっているのかもしれないなどと本気で考えてしまうのは、やはり花火の不思議なチカラなのでしょうか
悲しい出来事も
楽しかった出来事も
全て光の粒にして弾けている
次から次へと想い出となっている
あの日
花火を囲んで楽しんだ家族は
本当に影となって、暗闇の中に塗れた
この世から完全に消失した
そうして
私は今
花火の微かな煌めきしか思い出せません
それではまた、お会いしましょう
ごきげんよう
コメント