肉体恋愛

ファインダー

ごきげんよう

電車は、いつものように満員状態で身動きもままならない

京浜東北線、上野方面へ電車は向い、東十条駅を過ぎたあたりのいことでした

目の前の女性が傍らの女性に、明るい口調で呟きました

「私ね、今恋愛してるの」

「ぐうぇ~ッ!!」

年の頃はどちらも20歳前後か 

聞いた方は、唐突なこの言葉に返す言葉に困っている

それには構わずに言葉を続けます

「でも、なんかつまんないんだぁ~ 

 別に彼のこと嫌いじゃないのよぉ~ 

 好きか嫌いかと言えば、好きなのよぉ~ 」

「でもさぁ~

 彼と一緒に居ても 

 なんかさぁ~ 

 楽しくないの   」

相手の彼女は未だ無言のままに顔を見詰めています

電車は、王子駅に着いた

ぼくは其処で降りたので、その後の会話の内容は分りません

スタンダールは、恋愛に四つの型があると解いています

情熱恋愛趣味恋愛、それと肉体恋愛虚栄恋愛 

ぼくが改札口へ向かいながら

躊躇なく

あれは肉体恋愛だろうなどと真っ先に考えてしまったのは

誓って?

中年の卑らしさ以外の何物でもありません

それではまた、お会いしましょう

ごきげんよう

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