名水百選とは、後世に残したい清澄な水として湧水・河川・地下水・用水・自噴水の中から100箇所を国が選定したものです
1,985年の選定時には全国の自治体が推薦した784箇所を対象としました
2,008年にも実施されていますので、現在では名水二百選ということになります
先に選定されたものは「昭和の名水百選」と称し後に選定されたものを「平成の名水百選」と呼ばれています
やがては「令和の名水百選」が選定されるに違いありません
名水と聞けば、誰しもが水質が清らかで飲用に適した美味しい水と考えがちですが、環境省のホームページには次のようにあります
【環境省(当時環境庁)では、全国に多くの形態で存在する清澄な水について、その再発見に努め、広く国民にそれらを紹介し、啓蒙普及を図るとともに、このことを通じ国民の水質保全への認識を深め、併せて優良な水環境を積極的に保護すること等今後の水質保全行政の進展に資することを目的】
とあります
水量や水質だけではなく、景観や歴史的価値、水場としての環境整備や保全に対する地域住民の意識、自治体としての水の活用方法等々総合的に判断されるのです
名水を飲んでも安全ですか?
よくこの種の質問をされます
結論から述べさせていただきなすと名水百選に選ばれたからといっても安心して飲めるとは限りません
選定基準は水質だけではなく総合的に判断しますので、結果として名水百選の中には飲用に適さないものも含まれていることになります
話しは逸れますが、農林水産省は1,990年に「ミネラルウォーター類の品質表紙ガイドライン」発表しました
それによると日本のミネラルウォーターは4種類に分類され、殺菌方法によっても4種類に分けられておりますが肝心な水源の安全性についての基準(法律)がありません
まして名水の場合には、水をそのままの状態で販売することはないのでこの基準には全く当てはまりません
市民が名水場に訪れて飲み、体調を壊しても「あぁそうですか」と言われるだけのことです
一般的には名水(名水百選に限らず)飲料に適さない水であったとあったしても、自治体ではそれを摂取しない旨を公表しないのが通例です
それは何故なのでしょうか?
嫌味な言い方をすれば、ほとんど金を使わずに外貨(その自治体管轄外からのお金)を得ることができるからにほかなりません
人々は名水の郷と聞き、こぞってドライブついでに家族と其の地を訪れます
途中では、クルマの給油もしますし食事をしてお土産を買い帰りがけにスーパーやコンビニを利用するかもしれません
ただの水が大切な収入源となるのです
例え飲用に適さづとも公表を控える所以です
名水百選に選ばれた和歌山市名草地区にある紀三井寺の三井水の一つ𠮷祥水の湧水がありますが、出没するイノシシの糞害も影響してか2,006年当時、市の水質検査で飲用として不適として公表したケースは稀と考えた方がよろしいです
過去にこんな事件がありました
Ⅹ市の名水が化学薬品に汚染され、水質検査の結果飲用には適さないことが判明しました
検査機関は人体に悪影響があるとして、直ちにその旨を告知するよう自治体に進言しましたが自治体は4ヶ月間それを放置し結果新聞社へリークされて問題発覚となった事件があります
2,004年には名水百選に選ばれた郷に有害廃棄物である硫酸ピッチを何と採水する取水口の上流600mに投棄するという事件が発生しました
硫酸ピッチとはドラム缶を腐食させるほどの強酸性で水と反応すると亜硫酸ガスを発生します
ドラム缶230本、投棄面積は305㎡にも及びました
自治体が撤去した有害廃棄物の量は実に570.07トン
北海道の場合は特に、そのままの状態で飲用を勧めない理由の一つにエキノコックスがあります
エキノコックスは、キタキツネやタヌキなどの肉食動物の糞に混入したエキノコックスの卵胞を水分や食料(キノコや山菜など)を介して摂取することによって感染します
主に肝臓に寄生し、重篤の場合には死を招きます
無症状の潜伏期間が5年~20年と長いことが特徴の一つです
とは言いながら、私個人は名水の郷に訪れたことが多いことと原水をそのまま飲用したことは数知れず、病原体を体内に内包している可能性は極めて高いと自覚しております
名水の今後の課題
・水源の環境保護の取り組み
これは大前提として下記に掲げる項目の全てに当てはまることなのですが一つの自治体の管轄内で集結するとは限らず、数の大小の自治体が混在しているケースがほとんどですので連携することが極めて難しいのが実態です
・水質検査の実施
特に市民が採水する場合には、ただ黙認するべきではなく1日に4回水質検査を実施しているフランスの
Evian(エヴィアン)を倣わないまでも、年に1度程度は水質検査を実施するべきで特に人体に重篤な症状を起こさせる危険が発覚した場合には自治体のホームページや水源取水口に看板を設置するなどの注意を喚起する姿勢が必要です
・採水地周辺の管理体制の強化
・ゴルフ場に散布される農薬の影響はないか
・農薬を散布した農地からの影響はないか
・汚水処理施設から流される水の影響はないか
・工場から流される排水の影響はないか
・野生動物の影響はないか
・水源に影響をもたらす可能性のある建築物件の事前の把握する手立てはあるか
・水源周辺に住む住人への環境に対する啓発活動をどのように盛り上げ継続させるの方策はあるか実は此れも非常の難しい問題なのです
水源と自治体の管轄が同一でないことがほとんどで一自治体の管理外となります国直轄で、なおかつ日本の水を守るという大義の下に法的強制力のある独立した機関の設立が絶対必要要件なのです
そのためには先ず、水に対する正しい認識が大切です
私が水の啓発活動を推進する所以です
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