あの世は確かに存在する

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今朝もご先祖様に手を合わせてご飯と水とお茶をお供えし読経いたしました

特定の宗派を信仰しているわけではありませんが、ご先祖さまから受け継いできたご仏壇に向き合うことが日課となっております

お供えするときに、必ず思い出すことがあります

それは父から聞いたことです

父はY市の出身です

今は漁業の街として全国に知られておりますが、ひと昔前までは林業も盛んだったことが、郷土資料館を訪ねると知ることができます

実は父も、10代後半の頃には短期間ではありましたが樹々の伐採に汗を流したそうです

その日も数名で山に入り作業をしていたのですが昼近くになって樹の上で作業していた一人の中年男性が、「あーッ」という声と共に地面に落下してしまいました

打ち所が悪かったのか、その日から昏睡状態が一週間も続いたのです

そうして、明け方に目覚めて最初に発した言葉が

「お願いがある」でした

訊くと、樹の上から地面に叩きつけられる少しの間に沢山の人に話しかけられたと言うのです

お坊さんや子供、老人や血だらけの兵士

皆、自分に近寄ってきて一生懸命話しかけてくるのですが一度に大勢で話すものだから、真剣な表情以外ほとんど話しの内容は覚えていません

ただ一人の若い女性の話し以外は ・ ・ ・

「私はO市の駅裏の官舎に住んでいる〇〇〇〇の娘の〇〇〇です

不治の病で20歳を目前に亡くなってしまったのです

もっと生きたかった

お願いがあるのですが、是非聞いて欲しい

私の両親は、全く信仰心のない人達で

仏壇のご飯も水も全然替えてくれないのです

ご飯は固くなり、カビが生えています

私は毎朝、賽(さい)の河原の水にご飯を浸して柔らかくし、カビを指で落としてから食べるしかありません

どうか、私の両親に伝えていただいて、毎朝ご飯を替えてくれるようにお願いして欲しい」

それを聞いた人たちは一様に驚いたのですがあまりにも本人が自分の代わりにその両親に伝えて欲しいと懇願するので父とその兄が代表して行くことになったのです

Y市からO市までの道のり約30キロ

そこを馬車で向かうのですから1日がかりです

それも、到底信じられない内容のために ・ ・ ・

O市の駅裏の官舎はそれ以外の建物がほとんどなかったので直ぐに分かったそうです

そうして、其処に行ってみると

驚くことに聞いたとおりの〇〇〇〇と書かれています

「ごめんください」

声をかけて出てきた方は痩せて疲れた様子の初老の男性です

とにかく、その方に話しの内容を伝えるしかありません

話しを聞くうちに、その男性の表情が硬くなりそうして涙を流し始めたのだそうです

「これを見てください」

隣の部屋に備えられている仏壇には、確かにカビの生えたご飯が在り陶器の器には何も入っておりません

「私が悪かった

 許してください

 これから、毎日ご飯は替えます」

と言ったそうです

このことを樹から落下した人に伝えると、娘さんとの約束を果たせたことで安心したと喜んだそうですが、名前も住んでいる所もご飯の状況も全てが一致していたのですから

不思議な話しです

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